![]() | 深海生物の奇妙な生態 (宝島社新書) (2014/03/10) 深海生物研究会 編 商品詳細を見る |
小学校の時、深い海の底にある美しい世界を想像して書いてみよう・・・という図画の時間があった。が、その時に大深海10,000メートルへ―ピカール父子の偉大な科学冒険の記録 (少年少女ドキュメンタリー)を読んで、何もない暗い世界にヒラメのような生き物を見た・・・とか知ってしまっていたために、すごく冷めてしまったことがある。本書によると、魚ではなくナマコの仲間を見間違えたのではないか、と書いてあった。興ざめかと言われると、それでも動く生物がいることには驚かずにはおれない。
海中を夢見るよりは、広さより深さにぞくぞくするような知への好奇心をそそられるなら、本書は絶対的なお勧め・・・になるはずだった。いや、確かに面白い。豊富な図版にあるその奇妙な生き物たちが現在の海中にいる、となれば、その好奇心に満足は簡単には与えられない。が、その興を削ぐのは、前半、対談で登場する数々の生物の名前と、その下の図版がほとんど一致していないことである。10歩譲って、本文と図版を別個に考えれば十分に行けるのだが、数ページ進んだところに図版を見ちゃうと、もうちょっときちんと組んでよ、編集さん、と思ってしまう。
後半、深海探査とそれによって発見された生物たちの話は、それだけでも読む価値がある。
時に、Carbon Capture and Storage式火力発電のCO2の捨て場を深海に!という暴論があったけど、そんなことをしたら海洋生態系から地球の環境は殺されてしまう!そこには深さによって住み分けられた物質の流れ・生命の流れがあり、海洋底・海淵は決して無生物の世界ではないのだ。もちろん、地中に捨てるのも地中生態系(30年前なら考えられなかったような深部にも微生物は生存している)を破壊するからやめてほしいが、そういう生態学的知見って、言論空間的にはないに等しいんだよなぁ・・・