なにやら妙な研究してる・そういう噂~環境科学&農生態学の物質循環研究者の日常~
 未だ論文が掲載されるまでは終わるに終われないのだが、今回のプロジェクト上で3年間6回の訪中を終えたので、思ったことなどを散文的に書いてみる。

 中国で一番大切なものは「人」、信頼できるか契約を共に走りきれるパートナーか・・・全てが紙の契約ではなく人と人のつながりで、これが最も重要だ。それはどんな国との共同研究でも言えることだが、特に中国では「人」と言うモノが強烈に効いてくる。最初低調だったが、何と無く潮目が変わったのが、3回目の訪中だったと思う。物事のパースペクティブが取れて、この方向、と決めて中国を解析しようと言うことを私が心に決めてかかったセミナーと、その後の議論・・・かなりシビアにつつきもすればつつかれもする、そんな中を剣突き合わせた後だったと思う。中国の教授とポスドク君たちにそれなりの本気を付きつけたことが、「やってやろうじゃないか」と言うことにつながったと思う。
 研究のことばかりではない。歓迎の宴会の席で白酒(バイチュウ)をやる時も日中戦線の激突は厳しい。40-50度の酒を、4-5mlのおちょこで何度も飲み干し合うのが普通だが、おちょこ(超ミニのワイングラスみたいな形)に注ぐ小さな水差しの様な容器(100mlくらい入る)の方を持って、「お前との乾杯はこっちだ!」と水差し様容器の方を一気することがそれなりにある。にこやかに、少しにやにや笑っているのが、こちらへの誘いだ。これをそれなりの回数やったりする。私はそれほど酒に強くないが、日中の間に火花が走るときに逃げるの愚を犯せない。途中でむせるとそれはそれでと笑って終わるが、きっちり飲み干すと、「こいつマジだ」と同席の人たちは感じてくれる。韓国では盃をシェアすることが友情の条件とでもいうモノになるが、中国では乾杯の杯を合わせるのが礼儀だと実に強く思った。それは「俺の酒が飲めねェのか」的なものではなく、シェアできれば喜ばれるし、反故にすればあしらわれる、と言うことである。
 人の顔と顔を突き合わせて、本気をモロ出しすること、その度合いが重要だと思った。
 門前払いされなかったら、この辺の強烈な人格を剣突き合わせることが、日本人にはできにくいし、習慣として存在しない。「門前払い」は、別に中国に限らず、韓国でも、或いはアメリカでもあるようだ(有難くも私は経験していないが)。その時の態度は、「嫌いなら嫌い、ってだけだよね」である。この辺のデジタルな感覚も日本人にはなかなか無い。で、人格の門が閉じていなければ、隙間にぶち込む感じだろうか。

 中国と韓国は日本同様・・・というか日本以上に贈答の文化が強い。そして日本には、中国・韓国に比してオーバークオリティなまでの武器が数多くあることを、日本人は知っておくべきだと思う。焼酎と日本酒、それらの古酒は、日本人と中国人、韓国人が味覚を共有して喜べるものなのだ、と私は確信した。それだけに、成田・羽田の免税品店には食ってかかりたい。日本のウィスキーは大目に見ても、非日本モノの酒一店舗分、そっくり日本の銘酒に置き換えるべきであり、其処には日本酒・焼酎のソムリエを複数配置すべきだ。韓国・中国のみならず醸造酒を楽しむ文化のある国には日本酒、蒸留酒文化の国には焼酎がウケる筈である。免税店にマスプロ酒が置かれているだけ・・・というのは余りに、とても貧しい。悪いが、日本は掃いて捨てられる程の穀類が生産できるのでありこれを酒に回せれば、政策的に穀類を酒にできない(米が生命線)中国、どう言う訳かイマイチな韓国の酒からして、日本は強く出ることができる。日本は物価高と考えられがちだが、まともな白酒の売価は8000円~15000円程(1RMB=\15)、マオタイに至っては20000円位した。いい目の2-3000円の日本酒・焼酎を置いておけば、相当に売れると私は考えるが、それでは場所台が出ないのかもしれないのか?私には日本人の最大の自虐が、免税品店の酒にあると思う。宮崎県のアンテナショップと鹿児島県のアンテナショップで結構焼酎を買っているが、中国に持って行くと言うと喜ばれると同時に驚かれたりするのがイマイチ寂しい。
 防疫上米を持ちこむのが中国では禁止、韓国では検疫にかけることとなっているが、これら食の国で食べられている米の味は、日本に比べるべくもない。そんな訳で、韓国には戦略物資として米を持って行くことがある。これまた、かなり喜ばれた。中国に密輸することも考えたが・・・危険は冒せなかった。そして「萩の月」。これの旨さとウケは日本人なら誰でもわかると思うが、中国で最も喜ばれたスイーツは、これだ。
 まだ見ぬ銘品はたくさんある筈だ。外に打ちだすことをしないのは、遠慮深さではなく自虐であり、ガラパゴスに自ら追いこんでいると私は思う。

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【2013/09/30 17:51】 | 研究
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