![]() | 犯罪者の自伝を読む ピエール・リヴィエールから永山則夫まで (平凡社新書) (2010/09/16) 小倉 孝誠 商品詳細を見る |
猟奇趣味の話でも背徳や悪の華といった風でもない。弁明でも無く、純粋な自己開示は、犯罪の内面を知るものとしての情報でもあるかもしれないが、もっとも純粋な自伝になりうると言うことを示した価値は、その構造的な矛盾と問題点を越えて評価されるべきだろう。自伝として書かれた(書くように依頼された)書類が、支離滅裂ではなく非常に良く物語られていると言うことにも興味を引いた。それが所謂文才ではなく、構造的に非常に堅固に構築されすぎた世界であるようにさえ思える。文才と言論を備えた犯罪者もいたわけだが、そうでない無学と言ってよいヒトにもこのような文脈が読み取れるところ、その物語るところには、ダイジェストとはいえ非常に引き込まれる部分があった。また、それを読み解き、ストーリーテラーとして働く著者の筆も相当にすばらしい。
深く感じ入る、と言う意味ではとても深い本だった。何気に買ったのだが、これほどまでに本との出合いに悦びを覚えたことは無いかもしれない。その意味では今年一番感じ入った本かもしれない。